東北大学大学院環境科学研究科

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アクティビティ(2026年度)

2026/07/15 劣化したプラスチックの強度を回復する新手法を開発
―分子量から強度回復を予測する新たなリサイクル設計指針を提案―

プレスリリース

【発表のポイント】

  • 高温多湿環境で劣化したエンジニアリングプラスチックPBT 注1 の強度を回復するリサイクル技術を開発しました。
  • 鎖延長剤 注2 PPDI 注3 を添加することで、切断された高分子鎖を再結合し、元の材料に近い強度まで回復できることを実証しました。
  • 分子量と引張強さの間にFox–Flory型の定量関係 注4 が成立することを発見しました。

【概要】

図1. 分子鎖再結合によるプラスチック強度回復を示す応力–ひずみ曲線。PBTは高温多湿環境下で引張特性が低下するが、劣化したPBT(D-PBT)に鎖延長剤PPDIを添加することで、力学特性が回復する。 R1~R10はPPDIの添加量(mol%)を示す。(b)は(a)の一部を拡大した図である。

プラスチックの大量生産と廃棄は世界的な環境問題となっており、資源循環型社会の実現に向けて高性能プラスチックのリサイクル技術が求められています。 しかし、使用中に劣化したプラスチックは、分子鎖が切断されるため、再利用しても十分な強度を得ることが困難でした。

当研究科の大塚光陽大学院生、王真金助教、栗田大樹准教授、成田史生教授らの研究グループは、Astemo株式会社と共同で、自動車部品や電子機器に広く使用されるポリブチレンテレフタレート(PBT)に着目し、 鎖延長剤であるPPDIを用いて劣化した分子鎖を再結合させることで、力学特性を回復する手法を開発しました。 最適条件では、劣化によって初期比38%低下した引張強さを94%まで回復させることに成功し、未劣化材料に近い性能を実現しました。 さらに、分子量と引張強さの関係がFox–Flory型の理論式で表現できることを見出しました。

本成果は、リサイクル材料の性能回復を経験則ではなく理論的に予測する新たな設計指針を提供するものであり、今後の循環型材料設計への応用が期待されます。

本研究成果は2026年6月23日、複合材料分野の専門誌 Composites Part A: Applied Science and Manufacturing に掲載されました

【用語解説】

注1. PBT(ポリブチレンテレフタレート) :自動車部品や電子機器のコネクタなどに広く用いられるエンジニアリングプラスチック。耐熱性や機械特性に優れる一方、高温高湿環境では加水分解によって劣化する。

注2. 鎖延長剤(Chain Extender) :切断された高分子鎖同士を再結合させ、分子量や力学特性を回復させるための添加剤。

注3. PPDI(1,4-フェニレンジイソシアネート) :イソシアネート基を持つ化合物で、高分子末端と反応して分子鎖を延長する。

注4. Fox–Flory型の定量関係 :高分子材料の特性と分子量の関係を表す理論式。本研究では、引張強さと分子量の関係がFox–Flory型の定量関係で表現できることを見出した。

【論文・著者情報】

論文タイトル
Molecular-Weight–Driven Recovery of Mechanical Strength via Chain Extension: A Fox–Flory-Type Approach to Polymer Recycling
著者
Koya Otsuka, Zhenjin Wang, Hiroki Kurita*, Fuminori Kondo, Masato Ikeda, Fumio Narita【*は責任著者】
掲載誌
Composites Part A: Applied Science and Manufacturing
DOI
10.1016/j.compositesa.2026.110017
研究室HP
複合材料設計学分野 成田・栗田・王 研究室

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