東北大学大学院環境科学研究科

東北大学大学院環境科学研究科

施設のご紹介

環境科学研究科本館

 2015年10月、青葉山の新キャンパスエリアに環境科学研究科の本館が完成しました。 この建物では、消費エネルギーの削減と環境に対する意識向上を目的とし、パッシブな省エネルギー手法である「効率的な自然換気」「自然採光の確保」「グリーンカーテン」が可能になっています。 また、仙台市営地下鉄東西線青葉山駅に近接するアクセスの良さを生かし、せんだい環境学習館「たまきさんサロン」(仙台市)を1Fに開設するなど、地域に開かれた大学施設を目指しています。

自然素材を取り入れた空間づくり

 環境科学研究科本館内部は、国産木材や宮城県名産の白石和紙などを随所に取り入れ、近代的で合理的な空間の中で自然や伝統技術への敬意を表しています。 1Fホールの壁面オブジェ、白石和紙への揮毫作品「環境科学研究科」、岩石標本、2F研究科長応接室壁面オブジェ、3F大講義室壁面等、それぞれのポイントにはQRコードが付され、 来館された皆様はスマートフォンなどからアクセスして、実物を見ながら、素材や作品の解説をご覧頂くことができるようになっています。 パソコンからは こちらの施設紹介ページ をご覧下さい。

効率的な自然換気

 環境面での最大の特徴は、建物北側の東西2ヶ所に設けられたソーラーチムニーです。 ソーラーチムニーとは、建物内に煙突状の空気の通り道(チムニーシャフト)をつくり、このシャフト内の空気を太陽熱で暖めることでシャフト内外の温度差による上昇気流を発生させ、その誘引効果により建物内の自然換気を行うシステムです。 本館のチムニーシャフトは、屋根面をガラス張りにすることで、シャフト内の空気を太陽熱で暖めて上昇気流を発生させています。 また、シャフト上部の排気窓は、事務室に設置されたコントローラーを使って開閉制御を行うことができると共に、雨・風センサーによって天候に応じて自動的に窓が閉じる機能も備わっています。

自然採光の確保

 一般的に、階段やトイレなど居室以外の諸室では、電気による照度確保に頼り、窓のない場合が多くあります。 こうした形態は、災害などで電力供給がストップした際には暗室となってしまい、使用環境が悪化することが指摘されています。 この本館では、東日本大震災での教訓を踏まえ、居室以外の階段室・トイレ・廊下等を含む、すべての諸室に自然採光を取り入れました。

グリーンカーテン

 外気を取り込む南面のバルコニーには、グリーンカーテンを行うためのワイヤー用金物が設置されています。 ソーラーチムニーを利用しているこの建物でグリーンカーテンを実施した場合、ソーラーチムニーの空気誘引にグリーンカーテンの冷却効果が相乗的な効果をもたらし、自然換気による心地よい内部環境の実現が期待されます。

オープンスペース

 環境学習館「たまきさんサロン」をはじめとして、大学と地域、大学と企業といった様々な連携を可能にするため、本館の1階に広いオープンスペースを設けました。 1階の展示スペースでは講演会やシンポジウム、公開講座など、広い用途での活用が可能です。

エコラボ

 「エコラボ」は、2010年春に環境科学研究科研究棟の隣に竣工した木造校舎です。 宮城県大崎市川渡に位置する農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターの杉や、同じく県北部から産出された木材といった、身近な木材を無垢材のまま活用した地産地消の建物です。 エコラボの名が意味するのは、Ecology、Collaboration、Laboratory。 シンプルで軽快な現代的外観と、木造の暖かみを併せ持つこの建物の中では、自然とテクノロジーを融合させ、環境負荷の少ない次世代型のくらしを創出する研究の成果が応用されています。

エコラボの建築コンセプト

 木造建築のもつ「暖かさ」「柔らかさ」を生かしながらも、断熱性や気密性といった機能性を満足させる設計です。 見通しの良い吹き抜けやガラス面、採光と換気を兼ねた天窓の存在により、研究者や学生だけでなく、一般市民にも開かれた建物として、「内外に開かれた空間」が構成されています。 吹き抜けを利用した「重力換気」、風の圧力差による「風力換気」、天窓を通した採光、木材と機能性壁材による調湿機能の活用により、電力消費を抑えながら快適な室内環境が維持されています。

 エコラボは「環境科学」をシンボリックに体現するため、里山の保全や森の存続を考慮し、構造材、骨組みから仕上げに至るまで地元の間伐材を主に利用しています。 また、地元の職人が扱い慣れている木造の伝統的仕口継手工法を採用し、少しでも地域経済の活性化に貢献できるよう努めました。

直流給電と蓄電池の利用

 エコラボの屋上には約5.8kWの太陽光パネルが搭載され、発電された直流電流を蓄電池を介して直流のまま館内へ供給するシステムが導入されています。 一般的な太陽光発電では、発電によって得られた直流電流を利用するため交流に変換し、使用する機器に応じてさらにそれを直流に変換する方式がとられています。 この変換の際に電力は熱として約10%程度が失われます。ノートパソコンや液晶テレビといったデジタル機器は直流で動くため、デジタル機器が増加した現在、変換ロスによる電力損失は見過ごせなくなっています。 そうした変換ロスの低減を図る試みとして、エコラボでは直流給電を採用しています。

エコラボと震災

 2011年3月11日の東日本大震災によって、東北大学では28棟もの建物が立て替えを余儀なくされました。 エコラボは2階建てという低層の建物という理由だけでなく、伝統的工法を駆使した木造建築の良さも相俟って、奇跡的に被害が及びませんでした。 さらにエコラボは太陽光発電と蓄電のシステムを備えていたことから、帰宅困難になった学生・教職員の一時的な避難所となって、照明と携帯電話等の情報端末へ電力を供給しました。

エコラボは非常時の機能を念頭に置いて計画されたものではありませんでしたが、被災時のこの経験により、自然エネルギーを地域の独立電源として常時利用し、災害に強いまちづくりに活用できる可能性が見いだされました。 今では、エコラボのシステムを基にした、非常時にも災害時にも自然エネルギーを活用するシステムが、石巻市や大崎市の一部公共施設に導入されています。

『ZEB』エネルギー消費量104%削減を達成

 エコラボは2019年3月、照明器具のLEDへの改修や太陽光発電の増設といったZEB(net zero energy building:建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物)化改修を行いました。 その結果、一次エネルギー消費量において104%の削減を達成し、東北地方初、指定国立大学法人の建物としても初めての『ZEB』認証(一般社団法人宮城県建築住宅センターのBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)による)を受けることとなりました。
エコラボパンフレット