東北大学大学院環境科学研究科

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アクティビティ(2025年度)

2025/10/23 加熱下の固体電解質で光駆動の電圧発生
―酸素の出し入れを伴う高温光起電力の仕組みを解明―

【ポイント】

  • 固体電解質 注1 であるGd添加CeO2-δとPtの界面に紫外線を照射すると、300-400ºCの加熱下で電圧が発生することを観測しました。
  • この高温での光電圧は、紫外線照射によって生じる酸素の取り込み(酸素不定比の変化) が寄与することを解明しました。
  • この発見により、高温で作動する新しいタイプの光電気化学デバイスの創出が期待されます。

【概要】

近年、再生可能エネルギーの有効利用に向けて、光を使って化学反応や発電を行う光電気化学デバイスが注目されています。 従来の光電気化学デバイスは室温付近での利用に限られ、高温での研究はまだ数少なく、未解明な点が多く残されていました。
当研究科の川田達也教授、倉田真樹大学院生(在籍当時)、山口実奈助教らの研究グループは、固体電解質として知られるガドリニウム添加セリア(CGO) 注2 と白金の界面に紫外線を照射し、300-400ºCの高温環境で電圧が発生することを明らかにしました。 紫外線照射によりCGOに酸素が取り込まれ、それによってCGO表面での酸素のエネルギー(化学ポテンシャル)が増大することが電圧発生に寄与していることを、 世界で初めて実験的に確認しました。 このような光による固体中酸素のエネルギーの制御は、 従来の太陽電池とは異なる新原理に基づいて光から電気・化学エネルギーへの変換を可能にする高温光電気化学デバイスの開発につながると期待されます。
本研究成果は2025年10月17日に学術誌 Advanced Optical Materials に掲載されました。

図1. (左)開回路電圧試験に用いたCGOの模式図と(右)UV照射時/非照射時の開回路電圧の時間変化。

【用語解説】

注1. 固体電解質 :イオンの拡散によって電気伝導が生じる固体。材料中で電荷を運ぶ担体は、電子・正孔などの電子性キャリアと、 Li/Na/O2-などのイオン性キャリアに大別されるが、固体電解質では電流の大部分をイオンが担う。 電子伝導は極めて小さいことが望ましい。

注2. ガドリニウム添加セリア(Gd-doped CeO2-δ, CGO) :酸化物イオン(O2-)伝導性を示す材料。 酸化雰囲気では主要な電荷キャリアが酸素空孔で電子やホールによる伝導をほとんど無視できるため固体電解質として機能するが、 還元雰囲気では電子伝導の寄与が大きくなりO2-と電子の混合導電体となる。 室温でのバンドギャップは3.2-3.4 eV程度であり、本研究で用いているLED光源(中心波長365nm)を吸収する。

【論文・著者情報】

論文タイトル
Origin of Ultraviolet-Induced High-Temperature Photovoltaic Response at Pt/Gd-Doped CeO2 Interface
著者
Mina Yamaguchi*, Masaki Kurata, Yuki Morita, Ryosuke Iwata, Shogo Fuwa, Akihiro Ishii, Hitoshi Takamura, Keiji Yashiro, Tatsuya Kawada【*は責任著者】
掲載誌
Advanced Optical Materials
DOI
10.1002/adom.202501971
研究室HP
分散エネルギーシステム学分野 川田・八代研究室