2025/10/21
植物由来の薬剤で岩盤改良・地熱エネルギーを引き出す
―地下の花崗岩に“水のみち”を形成し、持続可能な発電を後押し―
【発表のポイント】
- 植物由来の生分解性キレート剤 注1 GLDA を用いた薬剤処理実験で、地熱条件下の花崗岩の透水性を最大数十倍に改善しました。
- 特に厳しい条件である150ºC・50 MPa の条件でも効果を確認しました。
- 環境に配慮した新しい地熱開発技術として、世界的な脱炭素社会の実現に貢献が可能です。
【概要】
地熱発電は化石燃料を燃やさず、二酸化炭素の排出が非常に少ない再生可能エネルギーです。
特に、深さ2~5 km にある中温の花崗岩層(150~200℃)は世界中に広く分布しており、未利用資源として注目されています。
しかし、こうした岩盤は、発電に必要な水の通り道(透水性の高い割れ目)が少ないため発電利用が難しいとされてきました。
当研究科のLena Muhl 研究生(研究当時)、Luis Salalá 特任助教、Eko Pramudyo 特任助教、Jiajie Wang 助教、渡邉則昭教授は、
GFZ(ドイツ地球科学研究センター)およびダルムシュタット工科大学との国際共同研究により、
植物由来の生分解性キレート剤GLDA を用いた岩盤改良実験を実施しました。
その結果、150~200ºC、最大50MPa という深部条件においても、岩盤の透水性が数倍~数十倍に改善することを実証しました。
GLDA はグルタミン酸を原料とした生分解性薬剤で、従来の酸処理に比べて環境負荷が小さいのが特徴です。
今回の成果は、持続可能で安全な地熱開発の実現に向けた重要な一歩となります。
本研究成果は、2025年10月18日付でエネルギー資源工学分野の国際学術誌 Geoenergy Science and Engineering に掲載されました。
【用語解説】
注1. キレート剤 :金属錯体の形成に用いる配位子の一種。配位子は、配位原子と呼ばれる酸素や窒素のような非共有電子対を持った原子を含み、この配位原子が金属イオンと直接結合する。 配位原子を一つだけ持つ配位子を単座配位子、複数個持つものを多座配位子と言い、後者がキレート剤。 金属イオンとの結合の安定性は、単座配位子よりも多座配位子であるキレート剤の方が安定。
【論文・著者情報】
- 論文タイトル
- Enhancing permeability in deep, medium-temperature granitic geothermal systems via chelating agent stimulation
- 著者
- Lena Muhl*, Luis Salalá*, Eko Pramudyo, Jiajie Wang, Ingo Sass, Noriaki Watanabe*【*は責任著者】
- 掲載誌
- Geoenergy Science and Engineering
- 研究室HP
- エネルギー資源リスク評価学分野 渡邉研究室



