東北大学大学院環境科学研究科

東北大学大学院環境科学研究科

アクティビティ(2025年度)

2025/10/10 バイオマス灰を利用したCO2固定・肥料製造プロセス
―再エネ副産物を活かし、農林業とカーボンニュートラルをつなぐ―

プレスリリース

【発表のポイント】

  • 植物由来で生分解性の、水中の金属イオンを安定化させるキレート剤 注1 を用い、 木質バイオマス灰 注2 の環境負荷低減、資源回収、二酸化炭素(CO2)削減を同時に達成する新しいプロセスを開発しました。
  • 木質バイオマス灰から、高純度の炭酸水素カリウム(カリ肥料)と炭酸カルシウム(工業材料)を効率的に製造可能であることを実証しました。
  • キレート樹脂 注3 による重金属除去により、抽出に用いたキレート剤水溶液を再生して再利用できる持続可能なプロセスを確立しました。

植物由来キレート剤を用いたバイオマス灰の環境負荷低減・資源化プロセスと、それを基盤とする持続可能な資源循環型バイオマス・エコシステム

【概要】

生物資源を燃料とするバイオマス発電における木質バイオマスの利用は年々拡大し、それに伴い燃焼副産物であるバイオマス灰の排出量も急増しています。 木質バイオマス灰にはカリウムやカルシウムなどの有用元素が含まれる一方で、環境や人体に悪影響を及ぼす重金属も共存するため安全かつ効率的な利用が困難でした。 その結果、バイオマス発電の経済的・環境的な優位性が損なわれる要因となっていました。
当研究科の王佳婕(Jiajie Wang)助教、渡邉則昭教授、八戸工業高等専門学校の土屋範芳校長(東北大学名誉教授)らによる研究グループは、 植物由来で生分解性のキレート剤とCO2を活用し、木質バイオマス灰の環境負荷低減、資源回収、CO2固定を同時に実現する新しいプロセスを開発しました。 この成果はカーボンネガティブ 注4 ・バイオマス発電の実現に道を拓くものであり、CO2削減と資源循環の両立に向けた実用的なアプローチを提供します。
本研究成果は、2025年10月1日付で資源循環分野の国際学術誌 Resources, Conservation & Recycling に掲載されました。

【用語解説】

注1. キレート剤 :金属錯体の形成に用いる配位子の一種。配位子は、配位原子と呼ばれる酸素や窒素のような非共有電子対を持った原子を含み、この配位原子が金属イオンと直接結合する。 配位原子を一つだけ持つ配位子を単座配位子、複数個持つものを多座配位子と言い、後者がキレート剤。 金属イオンとの結合の安定性は、単座配位子よりも多座配位子であるキレート剤の方が安定。

注2. 木質バイオマス灰 :木材燃焼後に残る無機残渣であり、主成分は燃料由来のミネラルだが、実際の発電所では流動床ボイラーで使う珪砂や炉材が混ざることもある。

注3. キレート樹脂 :金属イオンと選択的に結合できる官能基を有する合成樹脂。水溶液中の特定の金属を効率的に捕捉・除去するために用いられ、重金属除去や資源回収に広く利用されている。

注4. カーボンネガティブ :経済活動によって人為的に排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が、森林や海洋による自然の吸収、あるいは脱炭素技術による人為的な除去・固定される量よりも少ない、 つまり大気中の温室効果ガス量がマイナスになる状態を指す。

【論文・著者情報】

論文タイトル
Converting woody biomass ash and CO2 into valuable resources via a sustainable chelation approach
著者
Jiajie Wang*, So Katsumi, Hiroshi Naganuma, Tomoyuki Makino, Chuanzhen Jian, Yuki Ohori, Vani Novita Alviani, Noriyoshi Tsuchiya, Noriaki Watanabe*【*は責任著者】
掲載誌
Resources, Conservation & Recycling
DOI
10.1016/j.resconrec.2025.108606
研究室HP
エネルギー資源リスク評価学分野 渡邉研究室