東北大学大学院環境科学研究科

東北大学大学院環境科学研究科

アクティビティ(2023年度)

2023/05/31 国際的な貿易、消費による生物多様性損失度を輸入国別に視覚化
―主要48品目の農畜産物別の生物多様性への影響を初めて評価―

CP(保全優先度)が「高い」「極めて高い」地域で生産されたココアが取引されているフローと取引量

人間が生活を営む上で、食糧となる農畜産物の生産、消費は不可欠です。 しかし、無秩序な農畜産物の生産、消費は、土地利用の大幅な改変につながり、生物多様性に悪影響を及ぼすおそれがあります。 こうした農畜産物の生産、消費、国際的な取引(貿易)が、どのくらい生物多様性に影響を与えているのかを評価することは、 持続可能な社会への転換を進める上で重要な課題となっています。

農畜産物の生産、消費、貿易が生物多様性に及ぼす影響を把握し、社会にとってわかりやすい形で示すことにより、 持続可能な社会への転換に向けた具体的な行動に結び付けるため、当研究科金本圭一朗准教授(総合地球科学研究所)などの研究者からなる研究チームは、 国際的に取引されている48 品目の農畜産物ごとに生物多様性への影響を評価し、地図上で可視化することに初めて成功しました。

生物多様性への影響の評価には、7,143 種の生物の生息地点情報をもとに算出した、「保全優先度」(CP)という指標を導入しました。 世界197 カ国を細かなブロックに分割(グリッド化)し、48 品目の農畜産物の生産場所が、 それぞれどのくらい生物多様性の保全にとって重要な地域と重複しているかを分析することにより、国別、農畜産物別の生物多様性への影響を地図上に表示しました。

48 品目の中で、国際的に消費が拡大しているコーヒー、ココア、パーム油などの生産は、特に生物多様性への影響が大きいことが示されました。 研究チームは、「国際的なサプライチェーンを担う企業などが農畜産物を調達する際に、 いかに生物多様性への影響を減らせるか工夫するなど、経済活動に活かして欲しい」と話しています。

なお、本成果の論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS: Proceedings of theNational Academy of Sciences)に5月31日(日本時間)に掲載されました。

48 品目の農畜産物の生産・消費が生物多様性にどの程度影響を与えているのか、色分けで表示した地図は こちらのサイト https://agriculture.spatialfootprint.com/biodiversity/ja で公開しています。 地球全体、国別での表示が可能です。

プレスリリース (総合地球環境学研究所:https://www.chikyu.ac.jp/