東北大学大学院環境科学研究科

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アクティビティ(2022年度)

2022/12/13 山形福島県境で群発地震を引き起こした地殻内の流体量を推定
群発地震の周期性、大地震との関係、金鉱脈との関連性を示唆

図1 本研究成果の概念図
a) 群発地震発生領域への流体の供給の概念図。流体の存在を示唆するS波の低速度域から、流体が上昇し群発地震を引き起こしたと考えられる。 本研究で推定したのはこの群発地震に関与した流体量である。  b) 群発地震を引き起こした流体量の再チャージ期間。青で示した流体量を、下部地殻からの流体供給(灰色)で再チャージすると、 100~10000年程度の時間が必要。一方でM9クラス自身の周期は1000年であり、再チャージ期間に含まれる。 右には本研究で使用した物理モデルと、それぞれによる流体推定量を示している。

沈み込み帯での水の循環の理解は、巨大地震の発生を始め多くの現象の理解にとって大変重要です。 しかしこれまで、流体の大まかな分布や、地質学的スケールでの理論的な循環量が分かっているのみで、具体的にどこで、 どれだけ流体が蓄積していて地震等の現象と結びついているかはよく分かっていませんでした。 東北大学流体科学研究所の椋平祐輔助教(当研究科協力講座)、当研究科の宇野正起助教、理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの吉田圭佑助教は、資源工学・水理学分野の物理モデルを用いて、 2011年東北地方太平洋沖地震の7日後に山形・福島県境で発生した群発地震について、群発地震を誘発した流体量を 106~108m3と推定しました。 この量の流体が群発地震発生領域付近に蓄積されていたことを世界で初めて明らかにしました。 さらに、この流体量は100年~10000年の期間で再びチャージされることを示し、 1000年サイクルで発生する地震の規模マグニチュード(M)9クラスの大地震との関連を示唆した他、 群発地震も金をはじめとする様々な鉱物脈を生成しうる可能性も示唆しました。 これらの知見は沈み込み帯の流体ダイナミクスを理解する上で、これまでと桁違いの時空間高解解像度での情報を提供し、 新たな知見をもたらした他、沈み込み帯の様々なプロセスでの地化学的な議論や、 異なる地質学的条件での群発地震の流体量推定の基となることが期待されます。
本成果は、2022年11月19日、英国 Nature Research 社が発行する科学誌 Communications Earth & Environment に掲載されました。
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