研究科長ご挨拶

環境,環境と声高に叫ばれ出してからもうずいぶんと時間が経ちました.
環境問題は,とかく悲観的になりがちです.地球温暖化,人口爆発,食糧不足,限りある資源,化石燃料に頼るエネルギー....,いずれも重い問題であり,これらの問題の深刻さを指摘して,地球の将来,人類の将来に警鐘を鳴らすことはとても重要なことでしょう.しかしそこにとどまっていては先はありません.環境問題に端を発して,くらしが疲弊し,社会不安が増大し,そして人の心もすさんでいく...,そんな将来は見たくありません.残念ながら、実のところ,この先どうやって進んでいって良いのか,まだ,はっきりとした処方箋は得られていない.それが,今の私たちの立ち位置です.
人口、食糧,資源,エネルギーといった地球の持続可能性を脅かす問題は,相互に連関し,問題解決の単一の答えは存在しません.さらに,この地球に暮らす人々のくらしの豊かさと心の豊かさは,自由な思考と,多様な価値観の中で熟成されるものであり,ここにも単純な答えはないのです.
環境科学は,入り組んだ現状を鋭く直視し,その先の新しい地球像,社会像を見いだしていく,そんな知の創造であると考えています.個々の問題を一つ一つ解決していきながら,その答えの先にある持続可能な社会のあり方を考える学問です.
東北大学は,環境問題の本質を理解し,地球と社会の持続可能性を追求する人物と学術を作り上げるために2003年に環境科学研究科を設立し,自然科学,社会科学,人文科学といった従来型の枠を越えた,新たな一歩を踏み出しました.
東北大学では,優秀な先達たちの長い伝統に支えられ,さまざまな分野で,世界最先端研究が進められています.各専門分野の豊富な実績を基礎に,それをさらに発展させ,そして,新しい科学と技術,そして社会の仕組みを考えていく,そんなことができたらいいなと思っています.
2011年,大きな震災に見舞われた東北,そして仙台.大切なものを失いましたが,私たちは少しずつ前に進んでいます.ここには,ほどよい社会※を作っていく,自然と,人と人とのつながりが残っています.環境科学研究科は,東北に寄り添い,そして世界を見据えます.
環境科学は,学問としてはまだよちよち歩きです.この先の成長が楽しみです.
未知に挑戦したいと考えています.
“活きた知”の積み上げが,次を拓いてくれると,確信しています.
多くの仲間が寄り集うことを期待しています.

※ほどよい社会:More is betterからEnough is bestへ.どんな技術,どんな社会が,地球と人にほどよいか,みんなで考えましょう.

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